北陸の冬は「雪おこし」「ブリ起こし」などと呼ばれる雷で始まる。11月の下旬ごろだろうか。「ゴロゴロゴロ」と不気味な雷鳴をとどろかせ、ときには激しい雷光も発する。日本海を通過する寒気に伴う大気の乱れが原因という。「いよいよ今年も始まるな」。曇り空と雪の日々が、3月半ばまで4カ月前後は続く。
小学生時代は雪合戦やソリ遊びはもちろん、かまくらを作ったり、軒下の氷柱(つらら)をもぎ取って大小を競うなど冬の遊びには事欠かなかった。夢中になって走り回り、防寒着の下は汗びっしょり。曇り空は気分をどんよりとさせ、雪かきは疲れもしたが、冬の楽しい思い出は少なくない。
積雪が2メートルを超すような豪雪地域と比べ、北陸地方の平野部では雪はさほど積もらない。金沢市の最深積雪は10年前に記録した88センチを除けば、ここ20年余りは40センチ前後で推移している。
ただ、今冬は福井市で25年ぶりに積雪が1メートルを超え、交通網が麻痺(まひ)する大きな影響が出た。屋根の雪下ろしや雪かきの重機にはさまれる事故など、雪に関係した今冬の死者は全国で100人を超えたという。金沢市近郊にある実家の近所でも、朝の雪かき中に1人が亡くなられた。
新潟大教授だった古厩忠夫(ふるまや・ただお)氏の著書「裏日本」(岩波新書)によれば、自然・地理的な違いだけではなく、「表日本」の太平洋側に対する「ヒト・モノ・カネの供給地として成立した呼称」だという。この用語は現在、マスコミでは使わない。差別、侮辱的な響きを持つことが理由とされる。新潟県出身の元首相、田中角栄氏(1918~93年)が政権の座に就いた影響との説もあるが、真偽のほどは知らない。
きょう2月11日の東京は、珍しく雪が降り続いた。12日の朝方にかけ、多いところで10センチの「大雪」になるといい、テレビのニュースが注意を呼びかけている。子供のころ、自分もそうだったように、雪国の人たちはきっと、つぶやいているだろう。「東京は、たった10センチで大雪だって、ね」。もちろん、雪への備えが人々の心にも、あるいは消雪・融雪装置といったインフラもない東京では、10センチでも大雪なのは確かなのだが。
東京勤務は通算16年を超えた。ほぼ晴天が続く関東の冬空は、同じ日本なのに不公平だと正直、思う。実は事務次官に意見をしたのは、数十人以上いる担当記者たちの中で、自分を印象付けたいという姑息(こそく)な思惑もあった。20代後半の若造記者に、次官はどう応じたか。「大変失礼しました。これからは気をつけます。教えていただき、ありがとうございます」。大物次官と呼ばれた理由を一つ見たような気もした。

(東京都内)



by 村山雅弥
日本海側の思い