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日本海側の思い

2011/02/11 16:56

 

  20年ほど前に初めて東京勤務になったとき、担当した官庁の事務次官に生意気にも苦言を呈したことがある。「次官、先ほどのご説明で何度か『裏日本』と言われましたが、適切とは思われません。これからは『日本海側』と言っていただけないでしょうか」

 

 北陸の冬は「雪おこし」「ブリ起こし」などと呼ばれる雷で始まる。11月の下旬ごろだろうか。「ゴロゴロゴロ」と不気味な雷鳴をとどろかせ、ときには激しい雷光も発する。日本海を通過する寒気に伴う大気の乱れが原因という。「いよいよ今年も始まるな」。曇り空と雪の日々が、3月半ばまで4カ月前後は続く。

 小学生時代は雪合戦やソリ遊びはもちろん、かまくらを作ったり、軒下の氷柱(つらら)をもぎ取って大小を競うなど冬の遊びには事欠かなかった。夢中になって走り回り、防寒着の下は汗びっしょり。曇り空は気分をどんよりとさせ、雪かきは疲れもしたが、冬の楽しい思い出は少なくない。

 積雪が2メートルを超すような豪雪地域と比べ、北陸地方の平野部では雪はさほど積もらない。金沢市の最深積雪は10年前に記録した88センチを除けば、ここ20年余りは40センチ前後で推移している。

 ただ、今冬は福井市で25年ぶりに積雪が1メートルを超え、交通網が麻痺(まひ)する大きな影響が出た。屋根の雪下ろしや雪かきの重機にはさまれる事故など、雪に関係した今冬の死者は全国で100人を超えたという。金沢市近郊にある実家の近所でも、朝の雪かき中に1人が亡くなられた。

 新潟大教授だった古厩忠夫(ふるまや・ただお)氏の著書「裏日本」(岩波新書)によれば、自然・地理的な違いだけではなく、「表日本」の太平洋側に対する「ヒト・モノ・カネの供給地として成立した呼称」だという。この用語は現在、マスコミでは使わない。差別、侮辱的な響きを持つことが理由とされる。新潟県出身の元首相、田中角栄氏(1918~93年)が政権の座に就いた影響との説もあるが、真偽のほどは知らない。

 きょう2月11日の東京は、珍しく雪が降り続いた。12日の朝方にかけ、多いところで10センチの「大雪」になるといい、テレビのニュースが注意を呼びかけている。子供のころ、自分もそうだったように、雪国の人たちはきっと、つぶやいているだろう。「東京は、たった10センチで大雪だって、ね」。もちろん、雪への備えが人々の心にも、あるいは消雪・融雪装置といったインフラもない東京では、10センチでも大雪なのは確かなのだが。

 東京勤務は通算16年を超えた。ほぼ晴天が続く関東の冬空は、同じ日本なのに不公平だと正直、思う。実は事務次官に意見をしたのは、数十人以上いる担当記者たちの中で、自分を印象付けたいという姑息(こそく)な思惑もあった。20代後半の若造記者に、次官はどう応じたか。「大変失礼しました。これからは気をつけます。教えていただき、ありがとうございます」。大物次官と呼ばれた理由を一つ見たような気もした。

(東京都内)

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コメント(6)

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2011/02/11 20:05

Commented by weirdo31 さん

私も昭和58年から59年にかけて、京都府北部の都市で勤務したことがあります。58年の暮から翌年2月にかけて日本海側は豪雪に見舞われ、隣家のおばあちゃんが「私も90になるけれど、こんな大雪は見たこともない」というほどの大雪でした。

地元紙で、雪の道を小学生が道路の端にてんてんと50㍍ぐらいの間隔で植木鉢が逆さまに並ぶ道を長靴で投稿する写真がでていました。新潟県の学校でした。

30分ほどしてはっと気がつき写真を見直したら、なんと逆さまの植木鉢に見えたのは電柱の頭だったのです!そして、田中角栄の「真値」に思い至りました。

 
 

2011/02/12 18:23

Commented by 村山雅弥 さん

weirdo31さん、コメントありがとうございます。
京都府北部の降雪地域といえば、当時の峰山町あたりでしょうか。
いまは合併して京丹後市になったようですが。
私は初任地が日本海側の兵庫・豊岡だったので、
舞鶴や、その周辺を訪れたこともあります。
私の赴任期間は昭和60年から3年間でした。
weirdo31さんとは、入れ違いのようになったみたいですね。

 
 

2011/02/15 19:47

Commented by starbeast さん

福井からお邪魔します…
まあ、「なれていないから」とは言え、雪道を自転車で通行したりノーマルタイヤで運転したりってのは「自覚の問題」かと…
ま、人のことは言えません。屋根雪下ろそうとし屋根に上がる途中でハシゴが滑って腕とあばらを折って結局屋根に上がらずじまい…未だに屋根を見上げて冷や汗を流していますけど(^◇^;)

にしても、その事務次官だった方は出来た方ですね。

 
 

2011/02/15 22:09

Commented by 村山雅弥 さん

starbeastさん、コメントありがとうございます。
骨折の大けがもされたとのこと、お見舞い申し上げます。
福井には私の親族や友人も住んでいます。
あと1、2回は雪のぶり返しがあるかもしれませんが、
大雪にならないことを祈っています。

14日夜から15日朝にかけ、
東京は都心で1センチ程度の積雪となり、
多くの方が転倒され、ケガもされたようです。
雪の怖さを、身をもって感じる機会が少ないがゆえに、
こうした事態が、雪が積もるたびに起きるのかと思います。
東京の人は、スタッドレスタイヤなど持っていないでしょうし、
もちろん東京の道路に消雪装置などありませんから、
雪道の運転は控えるのが正解でしょうね。
昨晩は、ノーマルタイヤで走る車を横目でじっと見ながら、
警戒しつつ帰り道を急ぎました。

くだんの事務次官は、確かに出来た人物でした。
いまも、ある方面で現役として頑張っておられます。

 
 

2011/02/17 22:26

Commented by atras さん

どうでも良い事ですが。

>北陸の冬は「雪おこし」と呼ばれる雷で始まる。



鰤起こしちゃうがけ。

 
 

2011/02/27 12:04

Commented by 村山雅弥 さん

atrasさん、コメントありがとうございます。
返信が遅れ、申し訳ありませんでした。
自分の記憶や気象庁の資料をもとに、
さらに文章全体の流れの中で適当な表現として
「雪おこし」との表記をしました。
もっとも、「鰤(ブリ)起こし」という呼称のほうが、
現在の石川県では一般的なのかもしれません。
石川県の地元紙「北国新聞」の最近の記事を検索したところ、
「ブリ起こし」という表記を使用していました。
ただ、昭和40年代の新聞記事をみると、
「雪おこし」との表現もあり、
石川県に限っても時代、地域によって呼称が異なるようです。
ご指摘を受け、ブログの原文を一部修正しました。
ありがとうございました。

 
 
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